茨城村狂想曲
里美村、水府村、美和村、緒川村、御前山村、東海村、桂村、七会村、大和村、旭村、大洋村、千代川村、新治村、美浦村、谷和原村、桜川村、玉里村、平成の大合併以前にあった茨城県内の村の名前である。
では皆さん、茨城に現在村はいくつ残っているかご存知でしょうか?
答えはたった二村、東海村と美浦村である。どちらも共通するのは平成の大合併時、冗談じゃねぇぞ誰が合併なんぞするかい、おらたちの金を獲られてたまるかと強硬に反対し、近隣の市町村のどことも合併しなかった経緯がある。理由は言わずもがな、東海村は原発マネーで潤い、美浦村は競馬マネーで潤っていたからだ。
しかし、3.11の震災以降東海村の様相は一変、税収の大半を賄ってきた頼みの綱である原発は再稼働の目途が立たないまま停止。まさに原発様さまであった村内の飲食店やスーパー、ビジネスホテル、タクシー会社などは原発に出入りする業者を含め、労働者の大半がいなくなってしまったわけだから、今は軒並み青息吐息である。震災前に借金して増改築してしまったビジネスホテルなどは本当に経営が苦しく、いつ倒産してもおかしくないという悲惨な有様だったりする。
片や、美浦村もここ数年税収の落ち込みが顕著であるという。競馬というものはすべてが歩合制で成り立っており、その歩合も得た賞金から分配されるという按配である。確かに年々競馬の売り上げが落ちてきているのは事実だが中央競馬の根幹を揺るがす程の落ち込みはない。 実際、美浦村所属の騎手でも年収で億を稼ぐ者も十指では足りぬほどであり、騎手の平均年収が1800万円というのだからいくら命を懸けてるとはいえ、収入的には恵まれた部類の職業に違いはない。また、厩務員で平均800万円、調教師になると平均1200万円と、競馬の売り上げが下がっているとはいえ、競馬業界全体で見てもまだまだ不景気とは縁遠い世界なのは確かだろう。
では、なぜ税収が落ちているのであろうか。
以前は有名な騎手や調教師であっても美浦村のトレセン内に住むのが一般的であったが最近はみなつくばに家を買うなり、マンションを買うなりして、そちらに住んでいるのである。 ジョッキー達の出勤時間は基本的に朝五時前で帰宅はお昼過ぎ、渋滞とは無縁の時間帯である。だったら30分程度で通えるハイソなニュータウンつくばに住もうというのも頷ける。進学塾や予備校などが多数あるつくばであれば子供の教育にも与える影響は大きいだろう。
困ったのは役場。納税は住所地に準ずるため、億のカネを稼ぐ競馬関係者の競馬マネーは国税を除き、すべてつくば市に入ってしまうのである。一説によるとタレントのほしのあきちゃんと結婚した三浦皇成騎手もつくば市に在住ということである(別居中との報道もあるが真偽は不明)。 恐らくはジョッキーや調教師本人の意向ではなく、嫁さんのあんな肥やし臭いところは嫌だということが(失礼な言い方だが)、つくば転居の一番の原因なんだろうけど、理由はなんであれ、美浦村の税収が著しく激減しているのは事実である。
原発の是非はこのサイトの本論ではないから問うことはしない。また、競馬にしてもこれから先カジノが合法化されたとき、どのような立ち位置になるかは皆目見当がつかない。
いずれにせよ、まさに行く川のながれは絶えずして、しかも本の水にあらず、よどみに浮ぶうたかたは、かつ消えかつ結びて久しくとどまることなしだ。今後、東海村がひたちなか市と合併、美浦村が稲敷市と合併なんて時代がもしかしたら訪れるかもしれない。東海村も美浦村も風光明媚ないいところなんだけどねぇ。